役立つかも判例vol.2(未払賃金の請求 飲み屋編)

こんばんは!村上です!

今日はワンピース57巻の発売日なんでウキウキです!

 

この判例はホステスさんが退職した店に対して、未払賃金と慰謝料を請求した事件で、未払賃金と慰謝料の一部が認められた判決です。

夜の世界とは言っても労働基準法は守らなければいけないよね!

 

 東京簡裁平成21年8月10日判決(平成21年(少コ)第1810号 未払賃金等請求事件)

 

 

1 被告は原告に対し,金34万9000円,並びに,内金26万9000円に

対する平成21年3月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合に

よる金員及び内金8万円に対する平成21年3月17日から支払済みまで年5

パーセントの割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用はこれを10分し,その7を被告の負担とし,その余を原告の負担

とする。                      

4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求の趣旨

被告は原告に対し,金51万9000円,並びに,内金26万9000円に

対する平成21年3月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合に

よる金員及び内金25万円に対する平成21年3月17日から支払済みまで年

5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 請求原因の要旨

(1) 原告は,平成20年12月1日から同21年2月17日まで,以下の条件

で被告にホステスとして雇用されていた。

日 給 2万7000円

指名料 1回2000円

同伴料 1回3000円

 

支払日 月末締め翌月15日支払い

(2) 原告は,平成21年2月1日から退職の意思表示をした17日までの間に

合計9日間(2日,3日,4日,9日,10日,12日,13日,16日,

17日)出勤し,指名7回を得て,4回同伴した。この間の賃金額は,以下

のとおり,合計26万9000円となる。

日 給 24万3000円(¥27,000×9

指名料 1万4000円(¥2,000×7

同伴料 1万2000円(¥3,000×4

(3) 被告は,原告からの内容証明郵便による請求に対しても不合理な弁解を弄

して支払わないだけでなく,勤務開始後短期間のうちに何度も勤務条件を一

方的に変更してくるなどの不誠実な対応を繰り返したため,原告は退職せざ

るを得なくなった。このような被告の不誠実な行為により,初めてホステス

業務を行った原告は精神的苦痛を受けた。これを慰謝するための慰謝料は2

5万円を下らない。

2 被告の主張要旨

(1) 被告が原告を雇用していたとの事実は争う。その余の事実は知らない。

(2) 被告はA株式会社(以下「A」という )の支配人であり,原告と被告個

人との間では,原告の請求の根拠となり得る契約は締結されていない。

(3) 甲4号証に記載されたAの住所は,B労働基準監督署から提示された報告

書のひな型に対応して「クラブC」の所在地を記載したものであり,Aの住

所(本店所在地)を記載したものではない。したがって,甲4号証の記載住

所に基づいた甲5号証ないし甲6号証によってAの法人登記が確認されない

のは当然である。

 

3 本件の争点

(1) 原告と被告の間で本件契約が締結されたか

(2) 未払賃金額

(3) 慰謝料請求が認められるか

第3 当裁判所の判断

 

1 認定事実

証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

(1) 原告は,平成20年12月はじめ頃,ウェブサイトで知ったホステス業務

の仲介人Dの面接を受け,紹介された数店を廻った上で,被告の店で働くこ

とを決めた。写真つきの履歴書を提出して被告のE営業部長(以下「E」と

いう )の採用面接を受け,Eからオーナーが採用を決めること,オーナーが。

採否を決めるについては写真がすべてであること,採用となればDを通じて

連絡することを告げられた。原告は採用され,平成20年12月初旬から勤

務開始となった。店での源氏名は「F」とされた(原告本人 。)

(2) 「クラブC」の店にはEが店長のような立場で常駐しており,ママ(多く

の従業員が被告と夫婦関係にあるとみていた)とともに店を運営していた。

入店後,Eがいうオーナーが被告であることがわかった。被告は,月の初め

のミーティングの時には必ず来てミーティングを取り仕切っていたほか,店

の様子を見に来たり客を連れて来た時にも,他の従業員等は被告をオーナー

として迎え,被告もオーナーとして振る舞い,被告の席に呼ばれると原告や

他のホステス達も緊張していた(原告本人)。

(3) 当初の勤務条件は日給2万8000円,指名料1回2000円,同伴料1

回3000円,勤務時間午後8時から午前1時であったが,2月から出勤時

刻を午後8時30分に繰り下げてもらうことに伴い日給2万7000円とな

った。業務内容は,自分で客を連れてきて売上を上げるのではなく,店のマ

マや他のホステスのお客にヘルプとしてつく,いわゆるヘルプ専門の役割で

あった。契約内容に関する書類が作成されることはなかった(原告本人)。

(4) 被告は,平成21年1月末頃から,当初合意していた労働条件の変更を求

め,ヘルプ専門の役割であるのに 「自分で客を呼んで来い 「呼べないと他

の客にヘルプとしてついても1月分の給料は払わない」,「ヘアセット代は被

告関連の美容院以外でやったものについては払わない」 ,などと要求した。そ

のため,原告は知人のGに依頼して2月17日に客として来てもらい,その

飲食代3万2000円は原告が負担することによって1月分の給料の支払を

受けた。原告は,2月17日限りで退職する旨を被告に告げた。

 

(5) 原告が本件未払賃金についてB労働基準監督署に相談し,その上で被告宛

てに賃金請求書(甲3)を出したのを受けて,被告が同署長宛に提出した報

告書(甲4)には「東京都港区a町b番c-d号HJビル4F クラブC

A株式会社支配人 I」との記載があるが,当該住所地にはAの法人登記

は確認できない(甲5,6 )。被告は,同報告書の中で,①原告は指名本数,

売上額で報酬が変わること,②顧客の売掛管理も行っている下請負人である

こと,③仮に雇用契約があるとすれば,当社(A)と原告の契約は継続中で

あること等を説明している(甲4)。

(6) 被告は港区役所生活衛生センターに対する届出を「クラブC」名義で行い,経営者は「港区a町b番c-d号 Jビル4F 有限会社K」としているが

当該住所では有限会社K(以下「K」という。)の法人登記は確認できない(甲7)

2 争点(1)(原告と被告の間で本件契約が締結されたか)について

(1) 被告は第1回及び第2回口頭弁論期日に出頭しないが,陳述したものとみ

なした答弁書及び準備書面において,被告はAの支配人であり,原告と被告

個人との間では原告の請求の根拠となる契約は締結されていないとして原告

を雇用していた事実を争っているが,それ以上の具体的な主張・反論をしな

い。しかし,前記認定の面接・採用の経緯,被告が「クラブC」においてオ

ーナーとして振る舞い,他の従業員等もオーナーとして迎えていたこと,B

労働基準監督署長宛の報告書の記載からすると,被告が「クラブC」におけ

る最高責任者(最終意思決定権者)であるとみるのが相当である。

(2) また,B労働基準監督署長宛報告書(甲4)では,「A株式会社支配人」

との肩書で,原告とAとの間での労働契約があることを前提とした説明をし

ているが,陳述したものとみなした準備書面(1)では,提示された報告書

のひな型に対応して「クラブC」の所在地を記載したもので,Aの住所を記

載したものではないから,報告書記載の住所でAの法人登記が確認されない

のは当然であると主張するのみで,Aの本店所在地や,被告との関係等を具

体的に明らかにした反論をしない。仮に被告が会社の支配人であれば,容易

にその会社の登記簿上の本店所在地を明らかにすることが可能であるにもか

かわらず,これを明らかにしない被告の行為は,原告主張事実に対する否認

の理由としては極めて不充分なものであるだけでなく(民事訴訟規則79Ⅲ),

訴訟手続における信義誠実の原則(民事訴訟法2条)にも反するものである

といわざるを得ない。

(3) 前記の認定事実に加え,本件訴訟の弁論終結に至る過程での前記の被告の

対応を弁論の全趣旨として考慮すると,被告は法人登記をしないままにAや

Kの名称を通称・屋号として使用しながら「クラブC」の経営をしているも

のと認めるのが相当である。そうすると,原告と被告との間で本件労働契約

が成立しているものと認められる。

3 争点(2)(未払賃金額)について

(1) 平成21年2月1日以降の原告の給与条件は,前記認定のとおり日給2万

7000円,指名料1回2000円,同伴料1回3000円,勤務時間20

時30分から23時である。証拠(甲2,甲3,原告本人)によれば,2月

1日から17日までの勤務日数等は,原告主張のとおり合計9日間(2日,

3日,4日,9日,10日,12日,13日,16日,17日)出勤し,指

名7回,同伴4回と認められる。

(2) 以上の勤務実績を前記の給与条件に当てはめて計算すると,以下のとおり,

未払賃金額は合計26万9000円となる。

日 給 24万3000円(¥27,000×9

指名料 1万4000円(¥2,000×7

同伴料 1万2000円(¥3,000×4

4 争点(3)(慰謝料請求が認められるか)について

(1) 本件契約の当初から本件訴訟の弁論終結に至るまでの,被告の対応を検討

する。

() まず契約の時点では,契約書,労働条件通知書等の労働条件を明示し

た書面を原告に作成・交付せず,労働関係法規の定めに反している(労働

基準法15条1項,同法施行規則5条3項)。

() 次いで,勤務開始後においては,被告は,当初の労働条件の変更を求

め,自分で客を呼んで来ないと1月分の給料を払わない,ヘアセット代は

被告関連の美容院以外でやったものについては払わない,などと一方的に

要求して,原告が飲食代3万2000円を自己負担して知人に客として来

てもらうなどの対応を余儀なくさせている。

() さらに,原告がB労働基準監督署に相談した後は,同署長宛て報告書

(甲4)では,Aの支配人の肩書で原告とAとの間で労働契約があること

を前提とした説明をしているが,本件訴訟における主張としては,原告と

被告個人との契約はないと争いながら,Aの法人登記の有無や本店所在地,

被告との関係等を具体的に明らかにした反論をしない。

(2) 以上,被告の一連の対応をみると,被告は労働法規に反して労働条件を明

示しなかっただけでなく,労働条件の変更を一方的に要求し,原告が法的救

済を求めようとすると訴訟手続における信義誠実の原則(民事訴訟法2条)

にも反する行為により雇用主が誰であるのかを不明確にし,原告の賃金請求

権の行使を困難にして賃金支払義務を免れようとしているものと推認される。

被告のこのような行為は,直接的には労働契約上の債務不履行ではあるが,

意図的な賃金不払いであれば刑事上は罰金刑の制裁(労働基準法120条1

号,24条)があるほか,民事上も労働法規に反し又はこれを潜脱して,社

会政策上優先的に保護されるべき労働者の生活の糧である賃金請求権を無に

するものとして,強い違法性を帯びる行為というべきである。

(3) そうすると,原告にとっては,財産的損害の賠償として未払賃金の支払を

受けただけでは,なお法的に損害が填補されたと評価できないほどの精神的

苦痛等の非財産的損害の発生が社会通念上認められる場合に当たると解され,

これを慰謝するための慰謝料請求が認められるべきである。一連の経過,並

びに,原告が1月分の給料の支払いを受けるために知人に客として来店して

もらい,その際の飲食代金3万2000円を自己負担していることを考慮す

ると,本件の慰謝料額は金8万円が相当と認める。

 

5 まとめ

以上のとおり,原告と被告の間で本件労働契約が締結されたこと,未払賃金

額は26万9000円と認められ,一連の経過に照らして金8万円の慰謝料請

求が認められるので,原告の請求はこの限度で理由があるのでこれを認容し,

その余は理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

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